塗装における「はじき」の原因について解説

query_builder 2025/05/19
著者:株式会社アヤノ塗装
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塗装作業を終えて数日後、塗膜の一部が弾かれたように浮き上がり、斑点ができていたと言った経験はありませんか。丁寧に施工したはずなのに、原因がわからず不安になってしまうというはじきと呼ばれる現象は、実は多くの塗装現場で共通して起きている不良のひとつです。

 

塗装表面の張力バランスが崩れれば、レベリング性が失われ、密着不良によって斑点が形成されるのです。特にプラスチックや樹脂素材では、塗料との相性による密着トラブルが起きやすく、処理方法を間違えると再発のリスクが高まります。そのため工程を細部まで理解して対処することが重要です。

 

この記事では、塗装におけるはじきの発生原因を掘り下げ、再発を防ぐための対策を解説します。最後まで読むことで、塗膜の品質を安定させ、不要な補修作業や手戻りの発生を防ぐことができます。

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塗装の「はじき」とは?初心者にもわかる塗装不良の基本現象

塗装工程において、完成後に塗膜が一部だけ薄くなったり、弾かれたように塗料が定着せず斑点状に仕上がってしまう現象があります。これがはじきと呼ばれる塗装不良です。塗装面の一部が塗料を弾くことで、膜厚が不足し、光沢や質感のムラが発生するため、美観と機能の両面に悪影響を及ぼします。はじきは外観不良の代表例であり、品質管理上で最も注視される不具合のひとつといえます。

 

特に近年では環境負荷の少ない水性塗料の使用が進んでいますが、水性塗料は表面張力の影響を受けやすく、はじきが起こりやすい傾向があります。そのため、表面エネルギーが低下している素材や、油分・シリコーンなどの異物が付着している表面では特に注意が必要です。

 

はじきの発生要因を理解するには、塗料のレベリング性や塗面との親和性、塗料中の添加剤との相性など、塗装全体の仕組みを把握する必要があります。特に、製品に使われる素材が樹脂やプラスチックの場合、表面エネルギーが低いため、塗料が密着しにくくはじきが発生しやすくなります。また、塗装ブース内の湿度や温度が不安定であったり、空気中に浮遊するダストや油分が混入することで、はじきが誘発されることもあります。

 

はじきとその他塗装不良の代表的な違い

不良名称 主な症状 発生原因の一例 判別ポイント
はじき 表面に塗料が乗らず斑点ができる 油分・シリコン・脱脂不良など 表面に塗料が弾かれたような跡が残る
ピンホール 小さな穴が無数に開く 塗料内の溶剤揮発・気泡の巻き込み 穴の深さや規則性
リフティング 下地塗膜が浮き上がりシワが出る 旧塗膜との相性不良、溶剤の強さ 表面に波打つような模様
クレーター 表面に丸い凹み 異物混入、空気泡の破裂 円形状の凹みが目立つ
ブツ 表面にゴミが混入し異物として固着 スプレーガンからのダストやブース内の塵 塗膜の一部に粒状の突起

特に塗面に油分が残留している状態や、洗浄が不十分な工程では、塗料の付着性が著しく低下しやすく、はじきが頻発します。また、添加剤やレベリング剤が適切に調整されていない場合も、塗料の流動性が制御できず、密着不良が起こる可能性が高まります。

 

このように、はじきは単なる見た目の不良ではなく、製品全体の品質に直結する重大な問題です。

塗装の「はじき」が発生する原因とは

塗装現場において最も多く確認されるはじきの原因が、洗浄不足または脱脂不良による再汚染です。塗装工程では下地の状態が仕上がりに大きな影響を与えるため、塗布前の表面処理は極めて重要です。しかし、見た目には分かりにくい微細な油分やシリコーン、作業時の指紋、空気中に漂う浮遊油滴などが表面に残留していると、塗料が密着できずに塗膜が斑点状にはじかれてしまいます。

 

洗浄工程で使用する脱脂剤や洗浄液の選定も重要なポイントです。素材によっては溶剤との相性により樹脂表面を劣化させてしまうことがあるため、塗装対象の素材特性に適した処理剤を選ぶ必要があります。また、洗浄作業が手作業で行われる場合には、作業員ごとの手順や処理時間のバラつきが発生しやすく、再汚染の原因となります。

 

一度脱脂した表面に、作業中の素手による触れや周囲からの空気汚染によって再び汚染が生じることもあります。再汚染を防止するためには、洗浄後すぐに塗装工程へ移行する、または専用の無塵環境で作業を行うなど、工程管理そのものを見直す必要があります。特に湿度の高い環境では結露による微細な水分が表面に残り、油分との複合的な影響によって塗料の密着を妨げることがあります。

 

以下の表は、洗浄不足や脱脂不良によって発生しやすいはじきの原因と、それに対する対応策を整理したものです。

原因内容 発生しやすい素材 影響する条件 主な対策方法
油分の残留 金属、樹脂 手作業のばらつき 脱脂剤の見直し、無水洗浄の導入
シリコーンの付着 樹脂、塗装済み素材 空気中からの拡散 作業環境の密閉化、防塵対策
再汚染(指紋・再付着) あらゆる素材 作業中の接触 手袋着用の徹底、洗浄直後の密閉保存
洗浄ムラによる成分残留 特殊加工面 洗浄剤の揮発不良 超音波洗浄、時間管理の徹底
湿度や結露による表面の不安定化 金属、塗装面全般 高湿度環境 環境制御(温湿度管理、送風制御)

これらの原因を未然に防ぐには、工程内での管理レベルを高めることが最も重要です。特に塗装ブース内では、空気の循環や温度管理、作業員の動線管理なども含めた総合的な工程設計が求められます。ブース内でスプレーダストが舞ってしまえば、いくら洗浄を行っても再付着が発生してしまいます。防塵性能の高いフィルターやエアー制御の最適化も有効です。

塗装法や素材別に異なる「はじき」の傾向について

塗装工程においてはじきの発生傾向は、使用される素材の特性に大きく依存しています。特に金属と樹脂という代表的な2つの素材を比較すると、それぞれ異なる物理的・化学的特性があり、それに応じて塗膜の密着性や塗料の適応性、発生しやすい不具合の傾向が異なります。はじきを防ぐためには、素材に応じた塗装前処理や塗料選定が極めて重要です。

 

金属素材の代表としては、鉄、アルミニウム、ステンレスなどが挙げられます。これらの素材は、表面に酸化皮膜や油分が残留していると塗料が弾かれやすくなります。特にアルミニウムは酸化被膜が形成されやすいため、化学的な前処理を適切に行わなければ、塗料との密着が不安定になります。また、金属表面は硬度が高く、物理的な足付け処理が不十分な場合、塗料が滑って密着不良を起こしやすくなります。

 

一方、樹脂素材にはABS、PP、PE、PCなどの種類があり、それぞれに異なる表面エネルギーを持っています。これらの中でも特にPPやPEは表面エネルギーが低いため、塗料が非常に密着しにくい素材です。塗装工程では、プライマーやコロナ処理、プラズマ処理などの表面改質が必要になることが多く、前処理が不十分であれば高確率ではじきが発生します。また、成形時に使用される離型剤やシリコーンが表面に残っていると、油分由来のはじきを誘発する原因になります。

 

素材によるはじき発生の傾向とその対策を以下の表にまとめます。

素材種類 表面特性 主なはじき原因 適した前処理方法 傾向と対策の要点
酸化しやすい 錆・油分の残留 研磨、脱脂、リン酸亜鉛処理など 表面の清掃徹底と足付け処理が重要
アルミニウム 酸化皮膜が形成される 酸化膜による密着不良 アルカリ脱脂、クロム処理、酸洗浄 表面処理による酸化膜の除去が不可欠
ステンレス 非常に滑らか 油分・光沢による密着不足 酸洗浄、粗化、下地プライマー 研磨や表面粗化で塗料の定着性を確保
ABS樹脂 比較的塗装しやすい 成形時の離型剤や静電気の影響 アルコール洗浄、プライマー 成形工程の管理と静電除去が必要
PP・PE樹脂 表面エネルギーが低い 塗料の付着不良、油分汚染 プラズマ処理、火炎処理、特殊プライマー 表面改質を行わない限り密着不良が高確率で発生

はじきの傾向を理解し、素材に応じた塗装法を選定することで、より安定した塗装品質を確保できます。素材別のノウハウを現場レベルで共有し、失敗のリスクを工程段階で排除することが大切です。

塗装の「はじき」を防ぐための策とは

塗装工程においてはじきを防ぐためには、塗装前の表面処理、特に脱脂と洗浄の精度が極めて重要です。下地にわずかでも油分や微細な粒子が残留していると、塗料が密着せず、塗膜の一部が斑点状に弾かれてしまいます。洗浄不足や脱脂不良はそのまま塗装不良につながり、製品の品質を大きく損なう要因となります。

 

塗装対象が金属か樹脂かによって、必要とされる脱脂・洗浄の方法は大きく異なります。

 

金属表面の場合は切削油や加工油、保管中に付着する防錆剤などの油分を確実に除去する必要があります。

 

樹脂の場合は、成形時の離型剤や静電気に引き寄せられる空気中のダスト、シリコーンなどが主な障害物質となるため、それぞれに応じた処理が必要です。

 

洗浄剤には大きく分けて有機溶剤系、水系(アルカリ・中性・酸性)があります。有機溶剤系は洗浄力が強く速乾性に優れていますが、作業環境や安全管理の面で制約が大きく、水系洗浄剤が選ばれるケースが増えています。水系洗浄剤の中でもアルカリ性タイプは油分除去に適しており、特に鉄やステンレスなどの金属素材に使用されます。一方、中性タイプは素材への影響が少なく、アルミや樹脂素材への使用に適しています。酸性タイプは金属表面の酸化被膜除去に使用されることが多く、リン酸系処理と併用されることもあります。

 

以下の表は、素材別に最適な洗浄剤の選定目安と代表的な洗浄方法を整理したものです。

素材の種類 主な付着物 洗浄剤の推奨タイプ 洗浄方法例 注意点
鉄、ステンレス 加工油、防錆油 アルカリ性水系 スプレー洗浄、超音波洗浄 放置時間による再酸化に注意
アルミニウム 酸化膜、油分 中性水系、酸性処理 酸性浸漬洗浄+アルカリ中和処理 素材表面の腐食防止が必要
樹脂素材 離型剤、シリコーン 中性水系、界面活性型 手拭き+静電除去 表面エネルギーの調整処理が必要

脱脂・洗浄後の乾燥工程も塗装品質に大きく影響します。乾燥不足による水分残留は、塗料の密着性を損ない、はじきの原因となるため、温度と時間を管理し、確実に水分を除去する必要があります。乾燥時の空気の流れや湿度も均一化することで、表面の仕上がりを安定させることが可能です。

 

素材や用途に応じて適切な洗浄剤と洗浄方法を選定し、工程を標準化・可視化することが、塗装不良の予防において極めて有効です。見えない表面の処理こそが、塗装の最終品質を左右するため、あらゆる製造現場において徹底した洗浄の実行が求められています。塗装前処理の精度を高めることは、はじき防止だけでなく、塗膜の耐久性、密着性、均一性といった全体の品質向上にも直結する重要な施策です。

はじきが起こった時の対応手順とおすすめ補修方法

塗装の仕上がりにおいてはじきが発生してしまった場合でも、症状が小規模であれば現場レベルでの簡易補修によって十分に修復が可能です。はじきの発生箇所が限られている、または軽度である場合、再塗装を全面的に行うのではなく、部分的な補修によってコストと作業時間を抑えながら、外観品質を回復することができます。

 

小さなはじきが発生した箇所は、基本的に除去研磨脱脂再塗装の4つの工程を踏んで補修を行います。

 

まず、塗膜が弾かれて形成された不具合部分の塗料を完全に除去し、表面を滑らかに整えることが必要です。

 

次に、細目の耐水ペーパーや研磨スポンジなどを使用して、表面を均一に研磨し、段差や凹凸をなくしていきます。

 

研磨後には必ず表面を脱脂し、油分や粉塵を完全に除去します。脱脂には専用のクリーナーや無水エタノールなどを用いると、素材を傷めずに表面を安定させることができます。この段階で再度はじきの原因となる成分が残留していると、補修後の塗膜にも同じような不具合が発生します。

 

その後、下地材やプライマーを塗布し、乾燥させてから補修塗料を重ね塗りします。補修塗料は、元の塗膜の色やツヤ、塗料の種類(溶剤系・水性系)にできるだけ合わせて選定することが仕上がりの品質を左右します。スプレー式のタッチアップ塗料を使用する場合は、距離や角度を調整しながら、均一な塗布を心がけます。

 

補修が完了した後には、塗装表面の乾燥を確認し、必要に応じてクリア仕上げやトップコートで保護層を形成します。

 

このように、はじきが起こった際でも早期に原因を特定し、正しい手順で補修を行えば、見た目と機能の回復は十分に可能です。補修のポイントは、トラブル部分を取り除くことに加え、再発しないように表面を整えることにあります。小さな補修をおろそかにすると、後々の全面再塗装につながる可能性もあるため、精度の高い初期対応が重要です。作業に不慣れな場合や仕上がり品質に強くこだわる場面では、専門業者への依頼も選択肢のひとつとして検討されるべきです。現場レベルの柔軟な判断が、最終的な塗装品質の安定化と顧客満足度の向上につながります。

まとめ

塗装のはじきは、目に見えない油分やシリコーンの混入、洗浄不足、表面の張力バランスの崩れなど、複数の原因が絡み合って発生する非常に厄介な塗装不良です。特に樹脂やプラスチックのような低表面エネルギー素材では、塗料の密着性が下がり、わずかな処理ミスが致命的な欠陥に繋がることがあります。

 

多くの現場で見られる共通点は、工程内の管理不足です。例えば洗浄後の再汚染や、乾燥条件の不適切さなど、小さな油断が塗膜の不均一やはじきを招いています。実際、塗装不良の約三割が、下地処理や環境制御の不徹底に起因しているという調査結果もあり、これは見逃せない数値です。

 

今回の記事では、はじきの原因を構造的・物理的に分解し、それぞれの場面でどう防ぐべきかを段階的に解説しました。塗装前の清掃や脱脂処理、レベリング性の高い塗料の選定、そしてブース内の湿度管理や静電気の除去といった具体策は、すべて再発を防ぐために重要なポイントです。また、万が一の補修にも対応できるよう、タッチアップや再塗装の手順も紹介しています。

 

はじき=仕方のないものとして処理してしまうと、不要な手戻りや塗料の無駄が積み重なります。最初の一手を正しく理解し、日々の工程に反映させることで、結果として時間やコストの損失回避にもつながります。皆様が、より確実で高品質な塗装を実現できる一助となれば幸いです。

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よくある質問

Q.塗装のはじきは具体的にどのような塗装不良の現象なのですか?
A.はじきとは塗装面に塗料が均一に付着せず、斑点状にはじかれてしまう現象です。表面の油分やシリコーンの混入、乾燥不良、張力バランスの乱れなどが複雑に絡み合って発生し、塗膜の密着性が大きく損なわれます。ピンホールやリフティングとは見た目が似ていても発生メカニズムが異なるため、原因の特定と適切な対処が重要です。塗面の状態や使用した塗料の粘度、塗布条件の不均一さが重なると、はじきの発生リスクが高まります。

 


Q.洗浄不足が原因のはじきはどのように防止できますか?
A.洗浄不足による再汚染は塗装のはじきの主な発生原因の一つであり、事前の工程管理が不可欠です。清掃後の表面に油分や微細な異物が残っていると、塗料が表面に密着せずに浮いてしまい、欠陥が生じます。脱脂処理では、素材に応じた洗浄液の選定と湿度・乾燥環境の管理が求められます。環境制御の行き届いたブース内での処理や、表面の張力と流動性を意識した処理方法により、塗装面の密着性を確保することが可能です。

 


Q.樹脂素材に塗装する場合、はじきが起こりやすいのでしょうか?
A.はい、特にプラスチックや樹脂は表面エネルギーが低く、塗料が密着しにくいため、塗装のはじきが発生しやすい傾向にあります。ABSやPP、PEなどの素材では、表面に加工時の離型剤や静電気による異物が残留していることが多く、洗浄と脱脂が不十分だと不良が起こりやすくなります。表面処理には専用のプライマーやコロナ処理、プラズマ処理などが効果的であり、塗料の付着性を高めるための下地管理が特に重要です。

 


Q.DIYで塗装のはじきを補修する場合、どのような工程が必要ですか?
A.小規模な塗装のはじきであれば、DIYでも対応が可能です。最初に問題箇所の塗膜を削り取り、研磨で表面を滑らかに整えた後、適切な脱脂剤で油分を除去する必要があります。その後、密着性を高めるための下地処理を施し、塗料を再塗布します。仕上げには塗膜の均一性を確保するためのトップコートが推奨されます。処理に使用する塗料や溶剤、研磨材の選定は素材や塗料の種類に応じて行うことで、再発を防ぎつつ高い品質を維持できます。

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